4 フランス人友達がくれたヒントの言葉

 

10分ほど待っていると、白い息を吐きながらやって来た見覚えのある顔が、こちらに手を振っていた。

 

「ヴィンセント!久しぶり!」

 

私は嬉しくて子犬のように尻尾を振りながら、駆け寄る。

 

『ゴメンね!元気シテタ?ちょっと汚いカッコでゴメンね!』

 

フランス人のオジちゃん、ヴィンセントは汚れたスニーカーと、作業着姿。

 

どこ行ってたのか聞くと、新しいパン屋のオープンに向けて、店を0から手作りしてるらしい。

 

「それで砂まみれなんだね」

 

そうそう、と流暢なニホンゴを話しながら、私たちは歩いた。

 

カフェに着くと、妊娠を報告。

 

お祝いの言葉の後に、『で?』と早速尋問が始まる。

 

 

私たちは、会うと仕事の話をいっぱいした。

 

元々は、知り合いの紹介で出会った彼とは、もうかれこれ・・・3年付き合い。

 

出会った頃から、ヴィンセントは日本語が上手だった。

 

 

だから、もっぱら私たちの会話は日本語。

 

 

うちの旦那さんとも仲良しで、家族の話もしたし、

 

大手の会社はルールが厳しすぎて私には合わないよ、と言えば、

へシルはベンチャー企業の方が合ってるよ、と言ってくれたり。

 

へシルにはしきたりとか守れないでしょ、とか

へシルは、経営者タイプだよ、とか、

 

 

私が憧れのあった起業やビジネスの話をしたら、

末恐ろしいね、と言われたり、

 

すごく自分が自分でいられる、楽な時間だった。

 

 

私には、変化より安定を求めるマニュアル通りの仕事はできない。

 

飽き性で、すぐに変化を求めるから。

 

仕事も2年続けばいい方で、そのあとは転職転職。

 

その考え方が、どうも日本人らしくないらしい。

 

 

 

日本にいると、「韓国人だから外国人扱い」されて、

海外に行くと、「日本から来た日本人」扱いされる。

 

どこにいても、アウトサイダーな感覚があった私にとって、

 

フランス人の型にはまらない自由そのものなヴィンセントの話は、いつも新鮮で面白かった。

 

 

そして、『世界中を自転車で旅していたんだ。

寝るところがないときはその辺で寝て、

お金がなくなったらパン屋で働いて稼いで、

そのお金を元にまた旅して。

歯が折れてるんだけど、これはシリアに行った時に戦争に巻き込まれて折れたんだよ。

いろんな国の言葉喋れる。

 

英語が話せるのなんて、当たり前さ!

 

 

フランス語より、英語が一番カンタン!!!

 

何よりも、英語がカンタンよ!!!!

 

イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語、アラビア語、なんでもなんでも!僕は話せる。

 

このあとは、こんなことを考えていて、新しいお店は全部自分の手で一から作る!』

 

 

彼の話を聞いていると、ゾクゾクした。

 

 

 

英語が話せるのは、当たり前!

 

 

頭をドンキで叩かれたような衝撃

じゃあなんで私は話せないんだよ!!!!!!!

 

 

そもそも考え方が違うんじゃない!?

 

確かに、フランス語は男性名詞とか女性名詞とか、言葉に男女の性別があって、

前置詞も多いし、

動詞の変形も多すぎる。

 

 

そう思うと、確かに、英語ってカンタンかも・・・

 

 

私の中で何かが変わり始めた瞬間だった。

 

 

私が英語を話せるようになるまで。5