2 転機。「英語が話せるって、カッコいい・・・」 

転機は突然やってきた。

 

 

とある外資ブティックで働いていた時、アジア圏のお客さんが入ってきた。

 

 

ラグジュアリーな店内で、下っ端の私は香水コーナーに配置されていた。

 

 

長年働いていた、黒髪のキリリとした知的な雰囲気を醸し出す先輩が、すぐさま英語で挨拶をする。

 

”Hi, How are you doing today? ーーー%$#!”

 

チョーーーーーーーーかっこいい!!!!!!!!!

 

後半は何を言っているのか、ところどころしかわからなかったけど、

 

でも先輩は外国人のお客様と楽しそうに笑いあって、そのまま買い物をエスコートしていた。

 

 

 

気づくと私は、いつもその先輩を目で追っていた。

 

(私も、あんな風にソツなく、英語が話せたらカッコいいだろうなぁ・・・)

 

 

 

ある日、電話が鳴った。

 

どうやら、電話の向こうのお客様は、英語を話しているらしい。

 

 

「誰か、英語が話せる人いない?あ、そうだ。吉野さん外大卒だったよね?電話いける?」

 

不意に上司から言われて、「は、ハイ、一応外大卒です・・・」と言ってしまった。

 

 

や、や、や、ヤバい!!!!!!

 

 

どうにか取り次がなきゃ!

 

きっと相手が何を言っているかどうかぐらいはわかる・・・ハズ!

 

そんなイチカバチカで、電話を受ける。

 

”Hello? I want to talk with Ms. —, %$#!? ”

ヤバい!!!!最後の方聞き取れなかった!!!!

どうしよう!!!!!!

 

とアタフタしながら、ごまかしていたら、また矢継ぎ早に同じ質問をされた。

 

(多分、あの先輩がいるかどうかを聞いているんだな!)

 

と察して、今はそこにいないことを伝えると、先輩が向こうから歩いてきた。

 

でも、私は先輩がここにいないと相手に伝えてしまった後で、

『じゃあ、後で掛け直すわね』的なことを言ってて、

 

時すでに遅し、お客様は電話を切ってしまった。

 

 

そこにいた上司が一部始終を先輩に話すと、

先輩が、「今の電話、誰から?」と私に聞いてきた。

ピリピリとした空気で、一気に凍りつく私・・・

 

「え、え、え、えっと、名前は仰らなかったんで・・・でも先輩と話したいと言っていました」

 

『で?私はここにいるでしょ?なのに電話切ったの?』

 

「はい・・・申し訳ありません・・・」

 

 

あきれた様子の先輩は、察しがついていたのかすぐにお客様に電話をかけていた。

 

そして、私が見ている前で、とっても楽し気に笑いながら、受話器の向こう側の外国人と会話を楽しんでいた。

 

 

 

・・・撃沈。

 

 

 

 

 

そもそも、出来ないのにできるとか見え張ってる場合じゃないし、

 

大事なお客様だったのに名前聞かないとかありえないし、

 

ここ一流外資ブティックだし、変なミスしたら信頼信用に関わるし、

 

てか、英語話せないのに、何で話せるとか言っちゃったんだろ・・・

 

話せないなら大人しく引っ込んでろよって感じだよね・・・

 

 

 

心の中で自分を責めに責めて、罪悪感でいっぱいになった私

 

でも、目の前で黒髪の先輩がケタケタと笑いながら英語で会話している姿が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

 

 

 

アジア圏のお客様が来た時、私は得意気だった。

 

 

韓国語なら、英語よりも格段に理解できて、話せるからだ。

 

 

 

その時、韓国人のお客様相手に英語で質問された。

 

その時は、なぜかスムーズに英語で答えることができた。

 

 

と言っても、「何色?」とか「サイズは?」とか、その程度のレベルでしかなかったけど。

 

 

台湾のお客様や、香港のお客様も接客した。

 

その時も同じように、英語で話すことができた。

 

 

 

あ・・・!

 

私は一つのロジックに気づいた。

 

『アメリカ人や、イギリス人や、オーストラリア人のような人とは英語で話そうとすると緊張してしまって話せないけど、

 

なぜかアジア圏の人とは英語で会話ができる・・・』

 

 

 

何でだろう・・・?

 

 

 

 

そうか!

 

 

『同じアジア圏の人との会話なら、間違ってもいいって、思ってるからだ!』

 

『ヨーロッパとか、アメリカの人の前では、彼らの方がすごいって思ってるから、緊張してしまうのかも』

 

 

 

私が英語に対して思っていた、と言うか、外国人に対して思っていた「先入観」とか、

 

「自分は欧米人より劣っている」という謎の思い込みが、

 

英語を話せなくしてしまっているのかもしれない。

 

 

そんな何かとっても大事なヒントのようなものを得た時期に、

 

 

私はまた人生の転機を迎えた。

 

私が英語を話せるようになるまで。2