3 妊娠を機に、人生が変わる。

 

冬のスペシャルなイベントに向けて、百貨店や街並みがソワソワと準備し始め、人々が浮き足立っている頃、

 

 

私は妊娠した。

 

 

 

 

念願の、赤ちゃん。

 

 

私は子供が産めないと思っていた。

 

社会人になった後、慢性的に貧血を起こして倒れるほど、

私は体が丈夫ではなかった。

 

 

 

そこに待望の赤ちゃん。

 

 

 

 

嬉しくて、嬉しくて、嬉しすぎて、こっそりと泣いた。

 

 

 

 

メンタルとガッツだけは、人一倍!と思っていたけど、そうでもないらしい。

 

まだ、あの英語電話事件を引きずっていた。

 

 

 

(私は身体が丈夫じゃないから、この冬の繁忙期は乗り越えられない。

万が一、赤ちゃんに何かあったらいけないし、ここは仕事をやめることにしよう。)

 

 

そう思って、仕事を辞めた。

 

 

 

 

でも、未練が残る・・・

 

 

(英語が話せるようになりたいな・・・)

 

 

 

仕事も辞めて、今までにはなかった有り余る時間を手にいれた私は、

 

 

暇で暇で、暇を持て余して逆に死にそうだった。

 

 

体重もどんどん増えていくし・・・

 

大好きな服は着れないし・・・

 

毎日慌てて起きて、化粧して、満員電車に揺られて小走りで、

あのキラキラと輝くジュエリーのような場所へ出勤していた頃が懐かしい。

 

 

(あ・・・そういえば英語も、話せるようになりたいって思っていたっけ)

 

 

 

またふと、『英語』というキーワードが降りてくる。

 

英語、話せるようになりたいなぁ。

 

 

 

人生で幾度となく挑戦してきた、『英会話』

 

中学生、高校生、そして短大まで出て、

勤務先でも話すチャンスがあったのに、

 

 

それでも自分が思うようなレベルまではたどり着けない。

 

もっと流暢に、カッコよく、会話ができるようになりたい・・・

 

 

 

いつも見ていたお守りのDVDを手に取る。

 

『プラダを着た悪魔』

 

もうプロローグのBGMの1音まで、寸分の狂いなく覚えている。

 

 

1000回以上は見た。

 

プレーヤーの再生ボタンを押し、

 

主人公のアンディに自分を重ねて、サクセスストーリーになった気分を味わう。

 

私は鬼上司のミランダにも想いを寄せるようになっていた。

 

こういう、ちょっとSっ気のあるカッコいい女性もいいかもな。

 

 

いつしか洋画のセリフが一字一句書かれている本を手に入れて、

 

食い入るように洋画を見るようになった。

 

 

そんな妄想に耽りながら、健康オタクでずっと食べないようにしてきたポテチをかじりながら、

 

一日をなんとかやり過ごしていた。

 

 

それはそれで楽しかった。

 

 

 

わからない単語も、言い回しもたくさん出てくるから、

 

0から100まで順番に覚えてみようとしたけど、

 

 

それは途中で睡魔に襲われてしまって、断念。

 

 

なーーーんか簡単に、もっと手っ取り早く英語が話せるような方法ないかなぁ〜

 

 

そう思っていた矢先、

 

 

あっ!!!と思い出して、私はスマホを取り出した。

 

 

そういえば、私、フランス人とオーストラリア人の知り合いがいたんだった。

 

 

ちょっと久しぶりに連絡してみようかな・・・

 

 

妊娠したよって、報告もしたいし。

 

 

そう思い、気がつくと彼らがいつもいるカフェに向かっていた。

 

 

胎教にも良さそうだし、

 

とわけのわからない言い訳を作って、私は歩き出した。

 

 

 

私が英語を話せるようになるまで。4